チーズ店アレグリア

2020/05/20

  • ポートタウン

「ビーチじゃなくてベイだからいい。ここは昔から人の行き交いがあった場所」

「チーズ店 アレグリア」店主 岡林郁子さん インタビュー

丸亀駅北口のロータリーから1本入った通りにあるチーズ店アレグリア。marimekkoのクロスがテーブルランナーのように施された店内には、種類豊富なチーズと厳選されたワインが並んでおり、まるでお店全体がテーブルのようなしつらえになっていました。
アレグリアの店主・岡林郁子さんは、2019年6月にチーズ専門店をこの街にオープンしました。奥にはご主人大介さんが営む「BAR 月の下」が併設されています。

みなと街出身の郁子さんと、県外出身の大介さん。「この街はかっこええ」とおっしゃるお二人に、街の可能性とこれからについてお話を伺いました。


来て欲しいお客様にとって心地良いお店を作りたかった

元々、通町の商店街に面したところでカフェバー併設で長くされてましたよね?

郁子さん(以下 郁):そうですね。夫と一緒に「カフェバー月の下」をオープンして、それから3年後位ですかね、ショーケース1つでチーズ専門店を始めました。今年で10年になります。

カフェバーをしながら、なぜチーズ店を? 元々お好きだったんですか?

郁:いや、全然好きではなかったんですけど……(笑)好きでもないし、興味もないし。ただ、当時来てくれていたお客様がワイン好きの年上の方ばかりだったので、「お店に置いてるワインに合うよ」って珍しいチーズを持参してくれるようになったんです。そんな事が続いていた頃に「せっかく良いワイン置いてるんだから、チーズも良いのを置いてみたら?」って言ってくれて。

お客様の提案から始まったんですね。

郁:そうですね。そこから「じゃぁやるわ!」って、夫といろんなチーズを買っては試食して……の繰り返しで選び始めました。当時は二人ともチーズのことなんて全然知らなかったので、まぁダメやったら止めようみたいなノリでね。「1年位で止めるかもなー」なんて言ってたんですが、結局10年やってる感じですね。

こちらに移転するようになったきっかけについて教えてください。

郁:実は、通町にあった頃からチーズ店もカフェバーも表通りから引っ込んだところでやりたいなと思ってたんです。

当時はランチやって、カフェやって、夜はバーもやって……っていろんなスタイルをやっていたんで、いろんなお客様がいたんですが、年々来て欲しいお客様みたいなのが出来てきて。
自分たちが好きなお客様が、より居心地がいいようにって考えていったら、今の形でやりたいと思うようになったんですよね。

カフェ営業は止めて、チーズ店とバーは別々にするというスタイルですか?

郁:で、大通りに面した所ではなくて、1本入った路地裏みたいなところで。
ただバーがあるので、駅からは歩いて来られないと、足が困るじゃないですか。だからどこの路地でもいいというわけでもなくて、駅近くが良かったんです。

※チーズ店アレグリアの奥に併設する「BAR月の下」大介さんのこだわりが詰まった店内は、ディティールにこだわったシックな空間

ここは駅からものすごく近いです。偶然見つけたんですか?

郁:いえ、ここはずっと目を付けてました。駅の側にあるけど、駅前ではないし、南向きでいいなと。昔、古い長屋の食堂があったんですよ。ずっと空いていて「売物件」の看板があったんです。それで、夫と「ここええよなぁー」って言ってましたね。

駅の南側は考えなかったんですか?

郁:考えなかったですね……いや、全然分からないですけどね、「なんかこっち(北側)これから栄えそうな気がするよなぁ」って夫と話してたんです(笑)。「古い建物が多くて、かっこええ街よなぁ。こっち側で出来たら面白いんちゃうん」てね。物件を探してた頃は、夫とそんな事を話しながら、この辺りをうろうろ歩いてましたね。

街の可能性と課題

おっしゃるように、駅の北側は実際に古い建物が多くて、空き家の老朽化が進んでいます。そんな中にありながらも「栄えそう」な気がするのは、どういうところに可能性を感じているんでしょうか?

郁:例えばですけど、この場所にコンビニやチェーン店があっても誰も来ないと思うんですね。どこにでもあるから。

MIROC BEER(北平山町)さんが分かりやすい例で、あそこは自分の所で作ってるクラフトビールがあって、わざわざあそこに行って飲むのが良いんですよね。わざわざそこに行かないと手に入らないっていうのが出来るのがこの街の面白い所だと思います。

うちのウリはチーズを小さくカットしてるところなんです。大体チーズ屋さんって、大きい塊があって……スーパーで売ってるブルーチーズとかも大きいの多いんですよ。そんな中で、こうやって小さくカットしてると、たくさんの種類のチーズを選べるから、知らない味も試しやすくなると思うんです。いろいろ試しながら好きなものを探してもらえるといいなって思います。

そんな感じで、うどん屋さんでもパン屋さんでもなんでもいいんですけど、そこでしか手に入らないとか,立地とかもわざわざ行くみたいな……お客様にとっての特別を作り出すことがで出来るのはこの街ならではだと思いますね。大通りに面して、駐車場が広くて……みたいなところでは出来ないことが出来ると思います。

なるほど。一緒に散歩されたご主人はどのように思いますか?

大介さん(以下 大):県外から来た僕から見ると、港があって、すぐ近くにお城があって、はるか昔はいろんな人たちが行き交いしてたと思うんですよ。遊郭なんかもありましたしね。そういう土地なんで、新しい人が来ても、普通にやってれば受け入れてくれる所だと思いますよね。

ビーチじゃなくてベイだからいいんですよね。昔から交友関係が広がるような土地だったと思うので、僕たちはここで始められて良かったなと思いますよ。

実際にこのエリアに可能性を感じられて、移転後も駅の北側で商売をすることになったわけですが、課題に感じていることはありますか?もしくは移転するにあたり、問題視したことがあれば教えてください。

郁:やっぱり、この街で暮らす人が増えないと意味がないかなとは思います。面白い街だとは思いますが、何もないっちゃ何もないんですよ。オシャレなお店が立ち並んでるわけでもないですし。観光客が、ただ1泊で来て、うどん食べて帰ったくらいでは、私たちが思うこの街の良さは分からないんじゃないかなと思うんです。

それよりは、空き家もいっぱいあるから、売ってるのか貸してるのか、使えるのか修繕が必要なのか、そういう状況をもっと分かりやすくして、商売でも住むのでも、何かしら始めたいと思ってる人が踏み出せる環境を整えるといいですよね。
空き家がたくさんあるのは分かるんですけど、色々不透明じゃないですか。私たちはたまたま、いいなと思った物件に売りの看板があったから良かったですが、そういうのはまれですよね。

もっと回遊できる街になれば、もっと面白くなる

今後の展望をご夫婦でどのように考えてるか教えてください。バーの方も良ければ。

郁:ご主人……?(笑)今までめっちゃ喋ってたのに、急に振るっていうね……

(笑) ご主人、どうですか?

大:まぁ……もちろんベースはここに置きながら、もっと根付いて欲しいし、せっかくこれだけチーズがあるので、ここから外に出ていく商品があってもいいんじゃないかなとは思ってますね。ネットとかデパートとか……

HPを拝見した時にオンラインショップがあったように思いましたが、それとは別にということですか?

郁:一応あるんですけど、味を知ってる方はそこから注文してくれる方もいらっしゃいますが、このスタイルをネットで売るのはとても難しくて、だから「来てください」としか言いようがない状況ではあるんですよね。

大:チーズ屋さんはそんな感じですかね。バーは……まぁ後で店内見てもらったら分かるんですけど、客席も少ないので、ゆったりしてもらえる場所としてね、家に帰る前にワンクッション置けるような、そういう空間をこれからも提供していきたいですよね。

この街は、これからどのようになるといいなと思いますか?

大:町おこし的な単発のイベントとかではなくて、既にやってるお店も、これから新しく入ってくるお店も、普通に一生懸命やってれば潰れないっていう街になって欲しいなと思いますね。
個人個人がそれぞれに頑張ってれば、街全体として成り立つっていうのが理想です。

バーのお客様だとね、電車の時間まであと1時間ないけど……っていう人が立ち寄ってくれたりするんです。せっかくコンパクトにまとまってる街なんで、もっとそういう使い方をしてもらえるようになるといいですよね。とりあえずここに来れば、どこかで食べて、次またどこかで飲んでって、歩いて回遊できるじゃないですか。そうやってしながら交友が広がっていくのがいいなって思いますね。

なるほど。確かにこのコンパクトさは魅力ですね。梯子もしやすいし、行く先々でどんどん繋がりが広がっていく感じがします!ありがとうございました!


チーズ店アレグリアとBAR月の下。対照的な空間は、それぞれの個性がギュっと詰まっていて、「好き」という感情を大事にされているなと感じました。
自分たちが好きなお客様にとっての「居心地」を追求したお二人。結果、お二人は今もお二人の「好き」に囲まれている印象です。好きな街、好きな店、好きな人……そんな環境がこれからもずっと続きますように。応援しています! ありがとうございました。